お子さまの歯並び、遺伝だけが原因ではありません
「私の歯並びが悪いから、子供にも遺伝するのでは・・・」そんな不安を抱える親御さんは少なくありません。
確かに歯並びには遺伝的な要因が関係しています。しかし、実は歯並びを決定づける要因の約7割は、日常生活の中にあることをご存じでしょうか。
新潟大学歯学部を卒業後、30年以上にわたり小児歯科・矯正歯科の臨床に携わってきた私の経験からも、生活習慣の改善によって歯並びの悪化を防げるケースを数多く見てきました。
本記事では、子供の歯並びが悪くなる原因を遺伝的要因と後天的要因に分けて詳しく解説します。さらに、ご家庭で今日から実践できる予防方法もご紹介しますので、お子さまの健やかな成長にお役立てください。
歯並びへの遺伝の影響は約3割程度
遺伝するのは「歯並び」ではなく「骨格や歯の特徴」
歯並びが直接遺伝するわけではありません。
遺伝するのは、顎の骨の大きさや形、歯の大きさ、歯の質といった要素です。これらが組み合わさることで、結果的に親と似た歯並びになる可能性があります。
例えば、小さな顎に大きな歯が生えてくれば、歯が並びきれずにガタガタになってしまいます。また、上顎前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)といった骨格的な特徴も遺伝しやすい傾向にあります。
遺伝が関係する歯並びの問題
遺伝的要因が強く関係する歯並びの問題には、以下のようなものがあります。
- 顎の大きさと歯の大きさのバランス不良 … 顎が小さく歯が大きい場合、歯が並ぶスペースが不足します
- 上顎前突(出っ歯) … 上顎が前方に突出している骨格
- 下顎前突(受け口) … 下顎が前方に出ている骨格
- 歯の本数の異常 … 先天的に歯が足りない「先天欠如」や、逆に多い「過剰歯」
- 歯の生え変わり時期 … 乳歯から永久歯への生え変わりのタイミングや順番
ただし、これらの遺伝的要因があっても、必ずしも歯並びが悪くなるとは限りません。成長期の適切な管理や早期の介入によって、歯並びの悪化を防いだり、軽減したりすることが可能です。
歯並びを悪くする生活習慣が7割を占める
後天的要因が歯並びに与える影響
歯科医師の間では、歯並びに対する遺伝的要素は約3割程度で、残りの7割は日常の生活習慣や癖が原因と考えられています。
特に幼少期の習慣は、顎の成長や歯の位置に大きな影響を与えます。無意識に行っている何気ない癖が、将来の歯並びを左右してしまうのです。
歯並びを悪くする主な生活習慣
指しゃぶり
3歳以降も指しゃぶりが続くと要注意です。
指で前歯を押す力が長期間かかることで、上顎前突(出っ歯)や開咬(前歯が噛み合わない状態)を引き起こします。乳歯が生え始めたころから、少しずつやめられるように促しましょう。
口呼吸
口呼吸は歯並びに最も大きな影響を及ぼす習慣の一つです。
口を閉じていると前歯に唇からの圧力がかかりますが、口呼吸をしていると口が開いているため、その圧力がありません。また、舌の位置が下がってしまい、上顎が適切に発達できなくなります。その結果、上顎前突や開咬、叢生(ガタガタの歯並び)の原因となります。
舌癖(舌を出す・舌で歯を押す)
安静時や物を飲み込むときに、舌で前歯を押したり挟んだりする癖です。
舌の力で前歯が外に押され、歯と歯の間に隙間ができる「すきっ歯」や開咬につながります。舌を正しい位置(上顎に軽く触れる位置)に置くよう意識することが大切です。
頬杖をつく
頬杖は片方の顎に大きな負担をかけます。
長時間同じ方向から圧がかかると、顎の骨格に歪みを引き起こし、交叉咬合(歯列の途中が交叉している状態)や左右非対称の歯並びの原因になります。気づいたらすぐに直すよう心がけましょう。
悪い姿勢
猫背になると胸を広げることができなくなり、呼吸がしづらくなります。
すると、多くの空気を吸い込もうとして口呼吸になりやすくなってしまいます。悪い姿勢が口呼吸を招き、口呼吸が不正咬合を引き起こすという悪循環が生まれます。
うつ伏せ寝・横向き寝
いつも同じ方向にうつ伏せや横向きに寝ると、顔を押し当てることで歯が圧迫され、歯列不正を引き起こします。仰向けで寝るよう習慣づけることが理想です。
爪や唇を噛む
爪や唇を噛む癖は、上下の歯に強い力を与えます。
下唇を噛むと上顎前歯が前へ出やすくなり、上唇を噛むと下顎が前後に乱れることがあります。ストレスケアや十分な睡眠、健康的な食事を心がけることで改善を目指しましょう。
食生活が顎の発育に与える影響
柔らかい食べ物ばかりでは顎が育たない
現代の食生活は欧米化が進み、柔らかい食べ物が増えています。
パン、ハンバーグ、ポテトなど、数回噛んだだけで飲み込めるような食事が定着していますが、これらの柔らかい食事は顎を使う回数を減らし、顎の成長を遅らせてしまいます。
人間の口は、奥歯で固い物をまず左右にすり潰すようにかみ砕き、かみ砕いた食べ物を前歯に移動して上下運動によって噛み、咀嚼して飲み込むようにできています。柔らかいものばかり食べていると、前歯だけで食べ物を噛んで飲み込むので、顎が十分に発達しません。
噛む回数を増やす食事の工夫
顎の健全な発育のためには、以下のような工夫が効果的です。
- 和食中心の食事 … 干物、漬物、乾物など歯ごたえのある食材を多く使う和食は、自然と噛む回数が増えます
- 調理法の工夫 … 食材を大きめにカットする、野菜は火を通しすぎないようにするなど、歯ごたえをキープする調理を心がけましょう
- おやつも歯ごたえのあるものを … 干しいも、するめ、かた焼きせんべい、いりこなど、よく噛む習慣づくりに役立ちます
- 片側だけで噛まない … 左右バランスよく噛むことで、顎や咀嚼筋をバランスよく発達させます
固い食べ物もバランスよく食べさせることで、顎の骨に適切な刺激が伝わり、永久歯が並ぶスペースを確保できます。
虫歯も歯並び悪化の原因になります
乳歯の虫歯が永久歯の歯並びに影響
「乳歯は生え変わるから、虫歯になっても大丈夫」と考えるのは危険です。
乳歯の虫歯が増えると、噛む際に悪い癖がついてしまったり、本来の生え変わりのタイミングよりも早くに乳歯が抜けてしまうことがあります。その結果、永久歯が生えるスペースがなくなり、歯並びが悪くなります。
乳歯が虫歯になって抜歯しなければならなくなると、それだけで顎や顔の歪みの原因にもつながります。甘い食べ物や飲み物を与えすぎず、歯磨きの際には仕上げ磨きもしてあげることで虫歯を予防しましょう。
歯並びが悪いと虫歯・歯周病のリスクも上がる
歯並びが悪いと、歯ブラシが届きにくくなり清掃性が低下します。
歯が重なり合っている部分に細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病を引き起こしやすくなります。歯並びと口腔衛生は密接に関係しているのです。
ご家庭でできる歯並び予防のポイント
早期発見と早期対応が重要
子供の歯並びは、成長過程にあるため大人の歯に比べて動かしやすく、改善もしやすいと言えます。
早い段階で気づき、適切な対応をすることで、将来的な歯並びの悪化を防ぐことができます。
今日から実践できる予防習慣
悪い癖を意識的に直す
指しゃぶり、舌癖、頬杖、爪を噛むといった癖に気づいたら、優しく指摘してあげましょう。無理に叱るのではなく、なぜ良くないのかを説明し、一緒に直していく姿勢が大切です。
口呼吸から鼻呼吸へ
口を閉じて鼻で呼吸する習慣をつけましょう。寝ているときの口開きにも注意し、必要に応じてテープを利用するなどの工夫も有効です。
姿勢を正す
食事中や勉強中の姿勢に気をつけましょう。膝をしっかり伸ばして骨盤を立て、頭の重心が背骨に乗るように心がけます。小さなお子さまの場合は、足のつく椅子を選ぶことも重要です。
バランスの良い食事
柔らかい食べ物だけでなく、根菜やタコ、イカなど噛み応えのある食材も積極的に取り入れましょう。
定期的な歯科検診
定期的に歯科医院を受診し、生え変わりの状態や顎の成長をチェックしてもらいましょう。早期に問題を発見できれば、適切なタイミングで介入できます。
矯正治療を検討するタイミング
生活習慣の改善だけでは対応しきれない場合もあります。
遺伝的要因が強い場合や、すでに歯並びの乱れが進行している場合は、小児矯正を検討する時期かもしれません。小児矯正は、歯を無理に並べる治療ではなく、成長を正しい方向に導く治療です。
顎の成長誘導、永久歯が並ぶスペース確保、将来的な抜歯矯正の回避・軽減、噛み合わせの基礎作りを目的としています。年齢や成長段階を見極め、口呼吸や舌癖などの習慣も含めて総合的に判断することが重要です。
当院では、マイオブレース矯正という筋機能・習慣にアプローチする小児向け矯正法も取り扱っています。取り外し可能な装置を使用し、筋機能トレーニングを併用することで、成長期の顎発育を活かします。ただし、マイオブレースは万能な矯正ではなく、成長期に有効な選択肢の一つです。成長を見ながら段階的に進行し、必要に応じて次の矯正治療へ移行することもあります。
まとめ:遺伝だけでなく生活習慣が歯並びを左右する
子供の歯並びは、遺伝的要因が約3割、生活習慣などの後天的要因が約7割を占めます。
親の歯並びが悪くても、適切な生活習慣と早期の対応によって、お子さまの歯並びを守ることは十分に可能です。指しゃぶり、口呼吸、舌癖、頬杖、悪い姿勢、柔らかい食事ばかりといった習慣を見直し、今日からできることを始めましょう。
また、乳歯の虫歯も歯並びに影響するため、日々の口腔ケアも欠かせません。定期的な歯科検診で成長を見守り、必要に応じて矯正治療を検討することで、お子さまの健やかな成長をサポートできます。
SMILE10 矯正歯科・小児歯科では、見た目だけでなく機能を重視し、10年後・20年後も安定した口腔環境を維持することをゴールとしています。歯列・顎の位置・筋機能・呼吸・姿勢まで含めて総合的に考え、無理な治療・過剰な治療は行わない方針です。
お子さまの歯並びが気になる方、生活習慣の改善方法を知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。成長段階に応じた最適なアプローチをご提案いたします。
SMILE10 矯正歯科・小児歯科
神奈川県横浜市都筑区・センター北駅徒歩1分
矯正歯科・小児歯科を中心に、長期的な口腔環境の安定を重視した診療を行っています。
お子さまの歯並びが気になる方へ
スマイル10 矯正歯科・小児歯科では、お子さまの歯並びや顎の成長を確認するカウンセリングを行っています。現在の状態を確認し、必要に応じて治療や経過観察をご提案します。
矯正治療の詳しい内容
2026年3月17日 カテゴリ:Smileブログ















