舌癖とは?歯並びに与える影響を知ろう
お子さまが無意識に口を開けていたり、食事中に舌を出していたりする様子を見たことはありませんか?
実はこれ、「舌癖(ぜつへき)」と呼ばれる習慣かもしれません。
舌癖とは、日常生活の中で舌を上下の歯の間に出したり、歯を押し出したりする無意識の癖のこと。私たちは1日に600〜2000回も飲み込む動作をしていますが、舌癖のある方はそのたびに舌が歯を押す力が加わっているのです。
この習慣が続くと、出っ歯や歯と歯の間に隙間ができる、上下の歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」といった歯並びの問題につながります。また、サ行・タ行・ナ行・ラ行などの発音が不明瞭になることもあります。
舌癖の原因は、口呼吸・鼻の病気(アレルギー性鼻炎や蓄膿症など)・扁桃肥大・舌小帯が短い・指しゃぶりなど、さまざまです。
正しい舌の位置は、上顎の前歯の後ろにある「スポット」と呼ばれる位置です。舌の先をとがらせてこの場所につけ、舌全体が上顎にピッタリと吸い付いている状態が理想的。
舌がこの位置にないと、内側から歯を押す力に対して、外側から押さえる唇や頬の筋肉が十分に働かず、歯並びが乱れやすくなってしまいます。
舌癖のセルフチェック方法〜お子さまの習慣を確認しよう
お子さまに舌癖があるかどうか、以下の項目でチェックしてみましょう。
日常生活でのチェックポイント
- 食事のとき、奥歯ではなく前の方の歯で食べている
- 安静にしているとき、舌の先が前歯か唇にふれている
- 食べ物を飲み込むとき、舌の先が唇と接触する
- 口の中にある食べ物が見えやすい
- 食事中、食べ物が口からよくこぼれる
- 舌を出して、食べ物を迎えに行く
- 固い食べ物は苦手
- 一度にたくさんほおばり、よく噛まずに飲み込んでしまう
- 無意識のとき、口をポカーンと開けていることが多い
- 唇が厚ぼったく、ダランとしている
- 唇を閉じるとき、口元になんとなく違和感がある
- 口角が下がっている
これらの項目に複数当てはまる場合、舌癖がある可能性が高いと考えられます。
鏡を使った確認方法
鏡を持ち、唇を開けた状態で歯は噛んだ状態にします(イーの口)。
その状態で唾を飲み込んでみましょう。
もし歯と歯の隙間から舌がはみ出て見えていたり、歯に舌が当たっている感触があったりしたら、舌突出癖の可能性があります。
チューイングガムを使った確認方法
チューイングガムを柔らかくなるまで噛み、舌を使って舌の上で丸めます。丸めたガムを舌の先近くまで持っていき、上顎にガムを押し当ててその形を見ます。
ガムを丸くできない・前歯に付く・形が縦長という場合は、舌の位置が間違っている可能性があります。
MFT(口腔筋機能療法)で舌癖を改善する
舌癖を治すための訓練として、MFT(Myofunctional Therapy/口腔筋機能療法)があります。
MFTとは、舌・唇・頬といった口周りの筋肉を正しく使えるようにするトレーニング法です。
MFTの目的と効果
MFTの主な目的は以下の4つです。
- 舌の筋肉の力を強くする
- 唇や頬、口のまわりの筋肉の力をつける
- 正しい飲み込み方を覚える
- 普段の生活の中で、正しい舌の位置や唇の状態を保ち、正しい飲み込み方を習慣にする
MFTを継続して行うことで、口腔周囲の筋肉バランスを整え、癖を直すことができます。特に指しゃぶりと舌癖は、MFTでの症状改善が大きく期待できます。
MFTのメリット
MFTには、歯並び改善だけでなく、さまざまなメリットがあります。
- 矯正治療をスケジュール通りに進めることができる
- 矯正治療の効果を維持できる
- 表情筋が鍛えられ、自然で素敵な笑顔になる
- 食べ方がきれいになる
- 発音が改善する
- 正しい機能を身につけることで正しい発育が期待できる
また、口呼吸を鼻呼吸に切り替えることで、口腔内の乾燥を防ぎ、虫歯や歯周病のリスクを下げる効果も期待できます。
MFTの適切な開始時期
MFTの適切な開始時期は、3歳から10歳頃が理想的とされています。
この時期は顎の発達が活発で、舌の筋肉を鍛える効果が出やすいためです。ただし、大人になってからでも改善は可能です。時間はかかりますが、正しいトレーニングを継続することで効果が期待できます。
自宅でできる舌癖トレーニング〜基本エクササイズ
ここからは、ご家庭で親子一緒に取り組める舌トレーニングをご紹介します。
トレーニングは楽しく、無理なく続けることが大切です。
スポットポジション(1日10回)
舌の先を上顎の前歯の歯と歯茎の境目から3ミリ後方の膨らみ(スポット)につけます。舌先は上下の前歯に触れないことが重要です。
鏡で確認しながら正確な位置を覚えて練習しましょう。舌の先が丸まってしまいがちな方は、できるだけ口を大きく開けて練習するようにしましょう。
ポッピング(1日10回)
舌全体を上顎に吸いつけ、ゆっくり口を開けて舌小帯(ぜつしょうたい)を伸ばし、「ポン」と舌打ちをします。
この練習は音を立てることが目的ではありません。1秒間程度舌小帯を十分に伸ばしてから舌をパタンと落とす要領で練習します。
単に音を立てるだけの練習としっかり小帯を伸ばしながら行う練習では効果がまったく異なります。
オープンアンドクローズ(1日10回)
舌全体を上顎に吸いつけ、口を大きく開け、舌小帯を十分に伸ばしてから、そのままゆっくり軽く歯を合わせます。これを繰り返します。
ポッピングと同様に舌全体が上顎に吸いついていることが必要です。また歯を合わせたときにも、舌が挙上されたままであることが重要です。
あいうべ体操
口を大きく開けて「あー」、横に広げて「いー」、口をすぼめて「うー」、舌をしっかり出して「べー」と順番に動かします。
1日30回を目安に行うことで、口唇と舌の筋力がバランスよく鍛えられます。
スティックティップ
割り箸やスティックを口の前に垂直に持ち、舌先で押して3秒キープ。この動作を5〜10回繰り返すことで、舌尖(舌の先)の筋力が鍛えられます。
ボタントレーニング
糸に通したボタンを前歯でくわえ、外から唇の力だけで引っ張るトレーニングです。口唇の筋力を強化し、口唇閉鎖力の向上につながります。
これらのトレーニングを在宅ケアとして取り入れながら、必要に応じて歯科医院でのチェックやアドバイスを受けましょう。
マイオブレース矯正と舌癖改善の関係
当院では、小児矯正の一環としてマイオブレース矯正を取り入れています。
マイオブレースは、歯並びが悪くなる原因である筋機能・習慣にアプローチする小児向け矯正法です。
マイオブレースの特徴
マイオブレースは、取り外し可能な装置を使用し、日中1時間と就寝時に装着します。
この装置は、間違った癖や習慣を改善できるようにデザインされており、口呼吸・舌癖・正しくない飲み込み・唇や頬の筋バランス不良・顎の成長不足や偏りに対応できます。
マイオブレースとMFTの併用
マイオブレース治療では、マウスピースを使うだけでなく、筋機能トレーニング(アクティビティ)を併用します。
歯が正しい位置に自然に生えるように導くためには、舌・口・呼吸のトレーニングが不可欠です。マウスピースとトレーニングの二方面から、お子さまの歯並びが悪い原因を治していきます。
当院の考え方
私たちは、マイオブレースを「万能な矯正」とは考えていません。
成長期に有効な選択肢の一つとして正確に説明し、マイオブレース単独で完結しないケースも想定しています。成長を見ながら段階的に進行し、必要に応じて次の矯正治療へ移行することも視野に入れています。
治療の目的を「歯を並べること」に限定せず、10年後・20年後も安定した口腔環境を維持することをゴールとしています。
舌癖改善に必要な期間と注意点
舌癖の改善には、どのくらいの期間が必要なのでしょうか?
改善に必要な期間
MFTは月1〜2回のペースで行っていき、月2回のペースだと大体6〜8ヶ月程度で訓練は終了します。
その後はメンテナンスで3〜6カ月ごとに経過を見ていきます。ただし、これはあくまで目安であり、個人差があります。
大人になってから正しくない舌の位置を改善するのは、非常に時間がかかります。そのため、小さい子どものうちに正しい舌の位置を覚え、正しい物の飲み込み方を覚え、それを習慣化していくことが重要です。
トレーニングを続けるコツ
MFTは非常に地味で、ご本人の努力を要します。
しかし、舌癖が原因で歯並びが悪くなっている方は、矯正装置をつけなくても歯並びが改善することもあります。また、矯正治療とMFTの併用によって治療後の後戻りがしにくくなります。
トレーニングを習慣化するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 毎日決まった時間に行う(朝起きたとき、寝る前など)
- 鏡を見ながら正しい動きを確認する
- 家族で一緒に取り組む
- 楽しみながら続ける工夫をする
- 定期的に歯科医院でチェックを受ける
矯正治療中・矯正後のメンテナンスの重要性
矯正中は虫歯・歯肉炎リスクが上がり、矯正後も後戻りの可能性があります。長期安定には管理が不可欠です。
当院では、定期検診・クリーニング・ブラッシング指導・矯正装置使用中の管理・保定装置のチェックに対応しています。
メンテナンスは「付属サービス」ではなく、矯正治療の一部として組み込まれています。
まとめ〜舌癖改善で健康な口腔環境を目指しましょう
舌癖は、歯並びだけでなく、発音・呼吸・姿勢にまで影響を及ぼす習慣です。
しかし、適切なトレーニングを行うことで、これらの問題を予防・改善できる可能性があります。
MFT(口腔筋機能療法)は、舌・唇・頬といった口周りの筋肉を正しく使えるようにするトレーニング法であり、特に成長期のお子さまに効果的です。
当院では、矯正治療を「歯を並べること」だけでなく、10年後・20年後も安定した口腔環境を維持することをゴールとしています。歯列・顎の位置・筋機能・呼吸・姿勢まで含めて総合的に考え、無理な治療・過剰な治療は行わない方針です。
お子さまの舌癖が気になる方、歯並びに不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
正しい舌の位置を身につけて、健康な口腔環境を目指しましょう。
SMILE10 矯正歯科・小児歯科
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矯正歯科・小児歯科を中心に、歯並び・噛み合わせ・成長発育・予防管理を重視した診療を行っています。
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2026年3月19日 カテゴリ:Smileブログ
















